概要
金融サービスプロバイダーEightcapの英国・EU担当マネージングディレクター、パトリック・マーフィー氏は、埋め込み型金融の進化において、暗号資産を含む「マルチアセット取引」機能をプラットフォームに最初から組み込むことの重要性を語った。同氏は、ユーザーが複数の資産クラスをシームレスに取引できる統合環境がエンゲージメントを高め、単一資産のみを提供するプラットフォームは競争力を失うと指摘。Eightcapは「Eightcap Embedded」を通じて、ブローカー、取引所、ウォレットに対し、単一のAPIで暗号資産、外国為替、商品などへのアクセスを提供している。
背景
埋め込み型金融は、決済から融資へと発展し、取引が次の論理的な段階となっている。ユーザーが異なる資産クラスにアクセスするためにプロバイダーを切り替えなければならないプラットフォームは、競争力を失いつつある。マーフィー氏は、プラットフォームがユーザーの関与を維持したいのであれば、マルチアセットへのアクセスは最初から組み込まれている必要があると主張する。
テクニカル詳細
Eightcap Embeddedは、ブローカー、取引所、ウォレットが単一のAPIを通じてマルチアセット取引を統合できるサービス。そのAPIは、管轄区域の認識、KYC(本人確認)、AML(マネーロンダリング防止)、ライセンスロジックをオンボーディングプロセスと取引フローに統合した「コンプライアンス・バイ・デザイン」のアーキテクチャで構築されている。これにより、パートナーは並行システムを構築する必要がなく、コアとなるコントロールを再検証せずに迅速にローンチできる。
マーケット動向
具体的な数値データは、元の記事では明記されていない。ただし、マーフィー氏は、シミュレーション取引プラットフォーム「Eightcap Tradesim」での実験において、5日以上シミュレーション取引を行ったユーザーは、実際のアクティブなトレーダーになる可能性が高いという相関関係を見出したと述べている。
影響と展望
マーフィー氏は、今後2年間で、暗号資産だけでなく、トークン化された金、株式、現金同等物など、ほとんどの資産がオンチェーン上で移動し始めると予測。これにより、資本の使用方法が根本的に変化し、オンチェーン上に存在する資産は、担保、決済、再投資のために、はるかに効率的に活用できるようになるとしている。投資家はビットコインやトークン化された金、株式を動的な担保として利用し、他の資産を取引したり、デリバティブでポジションをヘッジしたり、即座に再投資したりできるようになる。
安定コインについては、USD₮のようなデジタルドルへのアクセスを拡大し、特に新興市場などで断片化された銀行・決済システムのギャップを埋める、過去10年間で最も意義のある金融イノベーションの一つと評価。Eightcapでは顧客の入出金をより迅速かつ確実にするために活用しているが、規制上の枠組みがブロックチェーン決済向けに設計されていないため、保管、保護、調整に関する要件は従来の銀行マネーを中心に構築されたままであり、完全な統合には至っていない。
まとめ
埋め込み型マルチアセット取引は、ユーザー体験とプラットフォームの収益化の両面で次のフロンティアとなる。Eightcapは、規制を内蔵したインフラと、トークン化資産や安定コイン決済を組み合わせることで、パートナーにシームレスでコンプライアンスを満たし、資本効率の高い取引体験を提供することを目指している。同社は、暗号資産とトークン化に関する規制が成熟する中で、従来の資本市場と新興のオンチェーン経済の架け橋となることを自らの役割と位置付けている。