概要
ベトナムの主要都市ハノイとホーチミン市(HCMC)において、不動産デベロッパーが高級マンションの開発に偏重している結果、都市部で働く若年労働者を中心とした中間層が住宅を購入・確保できなくなる「住宅難」が深刻化している。両都市の住宅価格は所得に対する比率で、シンガポールや東京などの主要アジア都市よりも高くなっているケースがある。
背景
ベトナムでは経済成長に伴い都市部への人口集中が続いているが、住宅供給の構造に歪みが生じている。不動産開発会社のビジネス戦略が、利潤率の高い高級住宅市場に集中していることが背景にある。
企業動向
記事では具体的な企業名や業績数値は言及されていないが、ベトナムの不動産デベロッパー全体の傾向として、高級マンションやコンドミニアムの開発に重点を置いている動向が指摘されている。これは中間層向けの手頃な価格帯の住宅開発が相対的に手薄になっていることを意味する。
市場分析
ハノイとホーチミン市の住宅市場では、高級物件の供給が活発である一方、大多数の需要を占める中間層向けの適正価格帯の物件が著しく不足している。この需給のミスマッチが、中間層にとっての住宅価格の相対的な高騰(所得比)を招いている。具体的な数値として、ハノイ在住の大学職員の事例が紹介されており、夫と子供2人と共に16.5平方メートル(車1台分の駐車スペース程度)の部屋で生活を共にしている状況が報告されている。
業界への影響
この傾向が続けば、不動産業界は短期的には高級物件市場で収益を上げられる可能性があるが、長期的には市場の基盤である中間層の購買力を失い、市場全体の持続的成長が損なわれるリスクがある。また、社会問題としての「住宅難」が悪化すれば、政府による市場規制や介入が強まる可能性も考えられる。
投資家の視点
不動産セクターへの投資家にとっては、高級住宅市場の成長に伴う機会がある一方で、市場の偏重とそれに伴う社会的不均衡が政策リスクや長期的な市場の縮小リスクとして潜在している。中間層向け住宅という巨大な未開拓市場への対応如何が、業界企業の長期的な成長性を左右する要素となり得る。
まとめ
ベトナムの都市部不動産市場は、デベロッパーの高級物件偏重戦略により、中間層の住宅購入機会を奪うという歪みを生み出している。住宅価格の所得比は国際的に見ても高水準に達しており、これは市場の持続可能性と社会安定の両面で重要な課題となっている。