バンエックのシーゲル氏が警告:負債を考慮すればMARAの「割安」は神話、実際はプレミアムで取引

仮想通貨関連企業のマラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)について、資産運用会社バンエックのデジタル資産調査責任者、マシュー・シーゲル氏が、同社の評価に関する見解を発表した。シーゲル氏は、MARAが自社のビットコイン保有量に対して割安(ディスカウント)で取引されているという一般的な認識は誤りであると指摘。MARAには33億ドルの転換社債(コンバーチブル債)が存在し、49億ドルのビットコイン保有額からこれを差し引いた正味のビットコイン価値は約16億ドルに過ぎないと説明。これに対し、時価総額は約47億ドルであるため、負債を考慮すれば、MARAは実際にはビットコイン保有量に対してプレミアム(割高)で取引されていると主張した。また、MARAの高い空売り比率(27%)のうち、転換社債に関連するデルタ・ヘッジを調整すると実質的な空売り比率は約15%まで低下するとの試算を示し、そのボラティリティの多くはビットコイン自体の値動き(ベータ)ではなく、資本構成や財務構造に起因すると分析。純粋なビットコインへのエクスポージャーという点では、競合他社のマイクロストラテジー(MSTR)の方がはるかにクリーンであると結論付けた。

概要

資産運用会社バンエックのデジタル資産調査責任者、マシュー・シーゲル氏は、ビットコイン採掘大手のマラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)について、その評価が一般的な認識とは異なるとの見解を示した。シーゲル氏は、MARAが保有するビットコインの価値に対して割安(ディスカウント)で取引されているとする見方に異を唱え、同社の巨額の負債を考慮すると、実際にはプレミアム(割高)で取引されていると指摘した。

背景

ビットコインを大量に保有する上場企業として、マイクロストラテジー(MSTR)とマラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)が知られている。両社の株価は過去6週間でそれぞれ約40%下落しており、MARAは前年比で55%下落している。一部の投資家は、この下落を受けてMARAが割安水準にあると見ているが、シーゲル氏はデータに基づきこの見方を否定した。

企業動向

シーゲル氏の分析によれば、MARAは49億ドルのビットコインを保有しているが、同時に33億ドルの転換社債(コンバーチブル債)を発行している。この負債を差し引くと、採掘事業その他の負債を考慮する前の段階で、正味のビットコイン価値は約16億ドルとなる。一方、同社の株式時価総額は約47億ドルである。このため、負債を考慮した上での評価では、MARAはビットコイン保有量に対するディスカウントではなく、プレミアムで取引されていることになる。

市場分析

MARAの空売り比率は現在27%と高い水準にある。しかしシーゲル氏は、同社の転換社債に関連するデルタ・ヘッジを調整すると、真の空売り比率は約15%まで低下し、44%の減少になると推定している。これは、80億ドル以上の転換社債を発行するMSTRと比較される。MSTRの場合、ヘッジ関連の空売りを除くと、空売り比率の減少は31%(約900万株)に留まる。シーゲル氏は、MARAの空売りは資本構造に起因する部分が大きいのに対し、MSTRの空売りはよりファンダメンタルズに駆動されたものだと特徴づけている。さらに、MARAの株価変動性の過半数は、純粋なビットコインの値動き(ベータ)ではなく、その資本構成や財務ダイナミクスに起因していると指摘した。

投資家の視点

シーゲル氏の分析は、MARAを「ビットコインへの単純な代理投資」と見なすことのリスクを浮き彫りにしている。同氏は、MSTRの方がはるかにクリーンなビットコイン・デュレーション(価格変動への感応度)へのエクスポージャーを提供する一方で、MARAの採掘事業を営む企業としての株価パフォーマンスは、問題のある資本構造に大きく支配されていると結論付けた。投資家がMARAに投資する際には、そのビットコイン保有量だけでなく、複雑な資本構成とそれに伴うリスクを十分に理解する必要があることを示唆している。

まとめ

バンエックのマシュー・シーゲル氏は、MARAの評価に関する通説に疑問を投げかけた。同社の巨額の負債を考慮すると、ビットコイン保有量に対する「割安」説は成立せず、むしろ「割高」で取引されていると分析。さらに、その高い空売り比率と株価変動性の多くは、ビットコインそのものの動きよりも、企業独自の資本構造に起因する部分が大きいと指摘した。純粋なビットコインへのエクスポージャーを求める投資家にとって、MARAはMSTRに比べて複雑で間接的な投資対象であるという見解を示した。

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