米上院暗号資産法案、DeFi・ステーブルコイン利回り・倫理問題の対立で今月中の審議見送りか-専門家

米国議会における包括的な暗号資産規制法案の審議が、主に3つの論点で停滞している。専門家は、上院での今月中の「マークアップ」(修正審議)実施は困難との見解を示した。問題点は、第一に、ステーブルコイン発行体による利回り(イールド)提供の禁止範囲を巡る銀行業界と立法関係者の対立。銀行側は「利子禁止」アプローチを拡大適用し、第三者が提供する利回りも規制対象とするよう求めており、これが法案成立に必要な票数を失わせる可能性がある。第二に、大統領家族の暗号資産関連事業制限を求める倫理規定要求が一部民主党議員から出ており、合意可能な条文が模索されている。第三に、分散型金融(DeFi)の扱いを巡り、規制対象を中央集権的なプラットフォームに限定すべきとする暗号業界と、ソフトウェア開発者やバリデーターも規制対象とすべきとするシタデルなどの伝統的金融グループが対立している。これらの未解決問題により、下院で7月に可決された「クラリティ法」に相当する上院法案の審議日程は不透明さを増している。

概要

米国上院における包括的な暗号資産規制法案「マーケット構造法案」の審議が、ステーブルコインの利回り規制、倫理規定、分散型金融(DeFi)の保護範囲を巡る3つの主要な対立点により停滞している。Variant Fundの最高法務責任者(CLO)であるジェイク・チェルビンスキー氏は、上院委員会による今月中の「マークアップ」(法案修正のための公式審議会)実施は見込み薄いとの見解を示した。同氏は、この市場構造立法が最も重要な暗号資産政策目標であると指摘している。

背景

暗号資産市場に対する包括的な連邦規制の枠組みを定める法案が議会で審議されている。下院では7月に「クラリティ法」が可決されており、どのトークンが証券に該当しないかを明確化し、中央集権的な取引プラットフォームに対するルールを設定している。上院では、銀行委員会が証券法関連部分を、農業委員会が商品先物法関連部分の草案を作成しており、両委員会の草案は今秋に公表された。マークアップは、法案が本会議に上程される前の必須手続きである。

市場分析

チェルビンスキー氏によれば、両委員会は、双方の草案が可決可能な状態に見えるまで審議を進めたがらない状況にある。この停滞は、法案の先行きに対する不透明感を市場に与えている。具体的な株価や取引量への言及は記事内にない。

業界への影響

1. ステーブルコイン利回り規制: 最大の争点の一つ。銀行業界は、ステーブルコインに焦点を当てた「GENIUS法」の「利子支払い禁止」アプローチを拡大適用することを求めており、発行体による利回り提供に加え、第三者が提供する利回りや非利回り報酬も規制対象とするよう主張している。現在の草案の文言は狭義に解釈されており、銀行側はこれを「抜け穴」と表現している。より広範な制限は、法案成立に必要な票数を失わせるリスクがある。

2. DeFiの規制対象範囲: 最も影響が大きい論点。チェルビンスキー氏は、規制は顧客資産を預かる中央集権的プラットフォームを対象とすべきであり、ソフトウェア開発者を仲介業者として扱うべきではないと主張。DeFiの保護を優先すべきだとしている。一方、シタデル証券などの伝統的金融グループは、開発者やバリデーター、その他のDeFiプロトコルを規制対象の仲介業者として扱うことを求めており、チェルビンスキー氏はこれを「規制による堀(モート)」の維持が目的だと指摘している。

投資家の視点

法案の停滞は、暗号資産業界全体の規制環境の明確化を遅らせる。チェルビンスキー氏は、Tornado Cashの開発者に対する執行措置や分散型取引所ビルダー関連の事例を引き合いに、暗号資産開発者に対する明確な法的保護(ガードレール)がない限り、市場構造法案は成立しないと警告している。また、一部民主党議員が要求する大統領家族の事業制限に関する倫理規定も、合意形成の障壁となっている。

まとめ

米上院における暗号資産規制法案の審議は、ステーブルコイン利回り、倫理規定、DeFiの定義・規制範囲という3つの難題により行き詰まっており、早期の進展は期待薄な状況である。業界関係者と伝統的金融機関の主張が鋭く対立する中、合意形成への道筋は不透明である。

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