概要
米連邦検察は、暗号通貨プロジェクト「テラフォーム・ラボ」の創業者ド・クォン氏に対し、投資家を欺き暗号市場を操作した詐欺罪で、12年の実刑判決を求刑した。テラフォームが発行したアルゴリズム型ステーブルコイン「UST」と関連トークン「LUNA」は2022年に崩壊し、市場に甚大な損失をもたらした。判決は2025年12月11日に下される予定。
背景
テラフォーム・ラボは、ド・クォン氏が創業したブロックチェーン企業で、米ドルと連動を謳ったアルゴリズム型ステーブルコイン「UST」と、その価格安定メカニズムに連動するガバナンストークン「LUNA」を運営していた。この「テラ」エコシステムは、最盛期には時価総額が500億ドルを超える規模に成長した。
企業動向
クォン氏は自社のブロックチェーン製品について一連の虚偽の主張を行い、投資家を欺き市場を操作したことを認める有罪答弁を本年早々に行っている。検察によれば、同プロジェクトは成功しているように見せるため、密室取引、隠された取引活動、欺瞞的な指標に依存していたという。
市場分析
2022年に発生したUSTのペッグ(連動)喪失とそれに連鎖したLUNAの暴落(「テラ・ルナ・クラッシュ」)は、暗号資産市場全体を巻き込む暴落の引き金となり、その後の「暗号の冬」と呼ばれる長期の市場低迷に大きく寄与した。検察は、この事件による損失額が、FTX、Celsius、OneCoinの三つの大規模な暗号関連企業の崩壊による損失の合計を上回ると主張している。
業界への影響
この事件は、アルゴリズム型ステーブルコインのリスクを露呈させ、業界全体に対する規制当局の監視を一層強めるきっかけとなった。また、投資家の暗号資産に対する信頼を大きく損ない、市場全体のセンチメントを冷え込ませる結果をもたらした。
投資家の視点
検察は、クォン氏の犯罪の規模と、事件発覚後の逃亡や責任転嫁などの行動を考慮すれば、長期の実刑のみが犯罪の重大性を反映し、同様の行為を抑止すると主張している。一方、弁護側は、モンテネグロでの拘置期間や韓国での訴追可能性を理由に、5年の刑期を求めている。
まとめ
米検察は、暗号市場に壊滅的な打撃を与えたテラフォーム・ラボ崩壊事件の責任者であるド・クォン氏に対し、投資家詐欺罪で12年の実刑を求刑した。事件の規模と影響の大きさから、判決は暗号資産業界におけるガバナンスと規制の在り方を考える上で重要な事例となる。