概要
イベント予測市場プラットフォームのPolymarketが、自社内にマーケットメーカーチームを設立し、自社プラットフォーム上でユーザーと対戦する形で取引を行う計画を進めていることが報じられた。競合のKalshiも同様の内部取引デスクを運営しており、ユーザーからの批判や訴訟の対象となっている。予測市場業界は急成長を続けており、2024年第3四半期の主要3プラットフォームの合計取引量は前四半期比565%増の31億ドルに達した。
背景
Polymarketは、2022年に商品先物取引委員会(CFTC)から規制上の問題を指摘され、140万ドルの罰金を支払って和解した。その後、同社は規制問題を解決し、米国市場での事業拡大を進めている。予測市場は、スポーツの結果からニューヨーク市の翌日の天気まで、多様な事象の結果についてユーザーが賭け(予測取引)を行うプラットフォームとして機能している。
企業動向
ブルームバーグの報道(12月5日付)によると、Polymarketは内部マーケットメーカーチームのスタッフを募集しており、スポーツベッターを含むトレーダーに参加を打診している。この内部チームは、自社プラットフォーム上でユーザーと対戦する形で取引を行う可能性がある。競合のKalshiは既に「Kalshi Trading」という内部ユニットを運営しており、取引所の流動性支援のために入札を行っている。Kalshiのこの手法については、先月提起された集団訴訟で、顧客を不利にする賭けのラインを設定していると訴えられている。
市場分析
予測市場業界は近年著しい成長を遂げている。2024年第3四半期には、Polymarket、Kalshiなどを含む主要3プラットフォームの合計取引量が、前四半期の4億6330万ドルから565%増加し、31億ドルに達した。両社は新規パートナーシップを獲得し、業界の拡大に伴い非公開市場での評価額も高まっている。流動性供給のため、両社は内部チームに加え、外部参加者にも依存しており、Kalshiではサスケハナ・インターナショナル・グループなどの金融企業がマーケットメーカー役を担っている。
業界への影響
PolymarketとKalshiが採用する、自社プラットフォーム上で内部デスクが取引に参加するモデルは、業界内で議論を呼んでいる。この手法は流動性の向上に寄与する可能性がある一方で、プラットフォーム運営者と一般ユーザーの間の利益相反(対戦関係)を生み、市場の公平性に対する懸念を引き起こしている。Kalshiに対する集団訴訟は、このような慣行に対する法的リスクの高まりを示唆している。
投資家の視点
予測市場の今後の発展を考える上で、プラットフォームの公平性と信頼性が重要な課題となる。コインベースのCEOブライアン・アームストロングは、ニューヨーク・タイムズのDealBookサミット(12月5日)で、内部取引(インサイダー取引)が「本当に優れた情報」を持つトレーダーを介することで、市場がより高品質なシグナルを得られ、予測の正確性が高まる可能性があると述べた。しかし同時に、市場の健全性を維持したいのであれば内部取引を望まないかもしれず、明確な答えはないと指摘した。一方、同じ討論に参加したブラックロックCEOのラリー・フィンクは、短期的な結果を予測する市場には懐疑的で、長期的な成果に焦点を当てる姿勢を示した。
まとめ
Polymarketは米国市場での拡大を図る中、流動性確保と市場効率化を目的に、自社内マーケットメーカーチームの導入を計画している。しかし、競合のKalshiが同様の手法でユーザーからの批判や訴訟に直面しているように、プラットフォーム運営者自身が取引に参加することは利益相反の問題をはらみ、業界の重要な論点となっている。急成長する予測市場において、市場の公平性・健全性と効率性・流動性のバランスをどう取るかが今後の焦点となる。