IMFがステーブルコインのリスクを警告する新報告書を発表、暗号専門家から批判噴出

国際通貨基金(IMF)は、ステーブルコインが各国の通貨主権と金融安定性に及ぼすリスクを強調する56ページの報告書を発表した。報告書は、ステーブルコインの普及が「通貨代替」を促進し、政府が自国通貨と金融政策を完全にコントロールする能力を損なうと指摘。その解決策として中央銀行デジタル通貨(CBDC)の推進を主張している。これに対し、暗号資産業界の専門家らは強い反発を示した。Gateの最高経営責任者(CBO)であるKevin Lee氏は、民間ステーブルコインとCBDCは共存可能との見解を示し、Huma.Financeの共同創業者Erbil Karaman氏は、ステーブルコインの利点は懸念を上回り、不安定な法定通貨経済に住む大多数の人々にとって解放をもたらすと反論。メキシコの大富豪Ricardo Salinas Pliego氏は、銀行や既存体制が権力と資金を失うことを恐れているためだと指摘した。この報告書は、ステーブルコインが政府や機関の通貨コントロールへの挑戦となり、政策競争を促す要素ともなり得ることを認めている。

概要

国際通貨基金(IMF)は2025年12月5日、ステーブルコインの普及がもたらすリスクに焦点を当てた56ページの報告書を発表した。報告書は、ステーブルコインが各国の「通貨主権」と金融安定性を脅かすと警告し、その解決策として中央銀行デジタル通貨(CBDC)を推奨している。これに対し、暗号資産業界のリーダーらは、ステーブルコインの実用的な利点やCBDCとの共存可能性を指摘し、強い批判を表明した。

背景

ステーブルコインへの国際的な関心が高まる中、IMFを含む中央銀行や国際金融機関は、ステーブルコインが政府の通貨統制に対する脅威となり得るとの見解を繰り返し表明してきた。今回のIMF報告書は、欧州中央銀行(ECB)や国際決済銀行(BIS)による最近の報告書と同様の論調を引いている。

企業動向

報告書の内容に対し、複数の業界関係者がコメントを発表した。暗号資産取引所GateのCBO、Kevin Lee氏は、「中央銀行が安定性に焦点を当てるのは当然だが、『代替リスク』という見方は大局を見誤っている」とし、「民間ステーブルコインと将来のCBDCは共存できる」との見解を示した。また、80億ドル以上のステーブルコイン取引を処理した決済ネットワークHuma.Financeの共同創業者、Erbil Karaman氏は、「ステーブルコインの利点は懸念をはるかに上回る」と主張し、「報告書は、大多数の人々が非常に不安定な法定通貨経済に住んでいることを認識していない」と批判した。

市場分析

報告書自体は具体的な株価や市場データには言及していないが、ステーブルコインを巡る規制環境の議論が活発化している状況を背景に発表された。暗号資産市場全体において、規制動向は市場センチメントに大きな影響を与える重要な要素となっている。

業界への影響

IMF報告書は、ステーブルコインが「資金洗浄やテロ資金調達などの違法目的に悪用される可能性がある」と指摘し、仮名性、低い取引コスト、国境を越えた容易さをその理由として挙げた。これに対し、業界関係者は、米ドルも同様に違法資金の移動に利用されていると反論の材料を提示。米財務省が2024年に発表した報告書では、「米ドルは米国内外で違法収益を輸送・洗浄する人気の方法であり続けている」とされている。

投資家の視点

報告書は、ステーブルコインが政府や機関の通貨コントロールへの挑戦となることで、通貨主権の喪失を避けるために政策を追求するよう政府にインセンティブを与える「競争要素」ともなり得ると認めている。暗号資産取引所Krakenの共同CEO、Arjun Sethi氏は、「貨幣を発行しコントロールする力が、機関から離れ、誰もが構築できるオープンなシステムへと分散している」と述べ、この変化が本質的なものであるとの見解を示している。

まとめ

IMFは、ステーブルコインのリスクを強調しCBDCの優位性を主張する報告書を発表したが、暗号資産業界の専門家らは、ステーブルコインが不安定な経済における実用的な解決策であり、既存の金融システムの失敗に対する答えであると反論した。この議論は、通貨の未来と、そのコントロールを誰が握るかという根本的な問題を浮き彫りにしている。

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