概要
ビットコイン(BTC)の価格が週末を前に反発を失い、9万ドル台を維持している。しかし、CryptoQuantの複数指標によるリスクオフ・オシレーターは「高リスク」領域付近にあり、過去の価格修正前と同様のシグナルを示している。また、損益スコアが-3という極端な水準に達するなど、構造的な調整のリスクが高い状態が続いている。アナリストは、10万ドルへの到達は心理的な転換点となり得るとする一方、現在の市場構造は弱く、9万2千ドルから8万2千ドルのレンジで推移する可能性も指摘している。
背景
ビットコインは2025年後半にかけて高値を更新する場面もあったが、直近では高値からの調整局面が続いている。市場では、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策、特に利下げの期待が一つの材料として注目されている。
市場分析
CryptoQuantのリスクオフ・モデルは、下落ボラティリティ、上昇ボラティリティ、取引所流入資金、資金調達レート、先物オープンインタレスト、時価総額の動向という6つの指標を組み合わせて市場の脆弱性を評価している。現在、そのオシレーターは60前後の「高リスク」領域付近に位置しており、調整リスクが高い状態を示唆している。
ビットコイン研究者のAxel Adler Jr.氏によれば、損益スコアが-3にまで低下しており、これは採算割れのUTXOが極端に集中していることを反映している。歴史的にこの水準は弱気相場や長期の調整期と一致してきた。現在の高値からのドローダウンは-32%で、通常のサイクルでの調整幅(-20%〜-25%)を上回っているが、投げ売り(キャピチュレーション)とみなされる閾値(-50%〜-70%)には達しておらず、脆弱な「中間ゾーン」にあると分析されている。
一方、Glassnodeのオンチェーンデータによると、今回の下落により、2022年のFTX崩壊以来となる大規模な実現損失の急増が発生した。これは主に短期保有者(STH)によるものだが、長期保有者(LTH)の損失は比較的限定的であり、過去のサイクルではこのような状況が下落の緩衝材となったことがあるという。
投資家の視点
あるCryptoQuantアナリストは、ビットコインが10万ドルに接近することは「心理的な転換点」であると述べている。突破が実現すれば新たな上昇モメンタムを呼ぶ可能性があるが、主要なラウンドナンバーではボラティリティの増大や上値試しが発生しやすい。市場時価総額の成長率が実現時価総額のそれを下回る状態(成長率差:-0.00095)が続いており、同アナリストはトレンド拡大よりも構造的弱さに傾いているとの見解を示した。
ビットコイン先物トレーダーのByzantine General氏は、ビットコインが重要な抵抗線で苦戦していると指摘。「もし突破すれば10万ドルを超えて急速に上昇する可能性があるが、ここで反落すれば、しばらくは9万2千ドルから8万2千ドルのレンジに留まる可能性が高い」とコメントしている。
まとめ
ビットコイン価格は9万ドル台で安定しているように見えるが、複数のオンチェーン指標やリスク評価モデルは「高リスク」シグナルを点滅させ続けている。10万ドルへの心理的節目が近づく中、FRB利下げ期待などのマクロ要因が上昇の契機となる可能性はあるものの、市場の構造的弱さと過去のデータが示す調整リスクを無視することはできない状況である。短期保有者の実現損失が急増する一方で、長期保有者の動向は比較的安定しており、市場の底堅さを示す要素もある。