概要
AI駆動型エンターテインメント知的財産(IP)プラットフォームのMugafiは、ブロックチェーン・プラットフォームのAvalancheと提携し、映画、アニメ、音楽などのメディア資産のトークン化を実施する。両社は、Mugafiのカタログおよび今後の映画から1,000以上のエンターテインメントIPをオンチェーン化し、クリエイターがプロジェクトの資金調達と流通をオンチェーンで直接行える新たな枠組みの構築を目指す。初期段階で1,000万ドル以上のエンターテインメントIPへの資金提供を計画し、長期的には年間10億ドルを超えるIPファイナンスのスループット達成を目標としている。
背景
エンターテインメントIPのオンチェーン化への動きは、クリエイターとプラットフォーム双方で数年前から勢いを増しており、トークン化やWeb3を活用した権利管理を探求する複数のプロジェクトが存在する。例えば、2024年9月にはAnimoca BrandsがAntlerの企業変革部門であるIbex Japanと提携し、日本のアニメ・マンガIPのオンチェーン化に焦点を当てたWeb3エンターテインメント基金を立ち上げている。
企業動向
Mugafiは、数千の脚本や物語構造で訓練されたAIシステムを用いて、プロジェクトが資金調達のためにオンチェーン化される前に評価を支援していると説明している。同社は2020年にインドで設立され、Nexus VP、HashedEM、Netflix、Amazon、Panorama Studiosなど複数のエンターテインメントおよびベンチャー投資家から出資を受けている。2025年に公開した映画「Kuberaa」は、3,500万ドルの興行収入を記録し、Amazon Prime Videoを通じて配信された。
市場分析
Avalancheは、この提携が同ネットワークが大規模なリアルワールドアセット(RWA)発行を支援できることを実証することを目指すと述べている。両社は、Avalancheのインフラを利用してエンターテインメントプロジェクトの資金調達、追跡、流通をオンチェーンで行う計画である。Mugafiは、このコラボレーションにより、AI、制作、ブロックチェーン運用、コンプライアンスなどの新たな役割が生まれると予測しており、インド、北米、日本、韓国を含む複数地域で1,500以上のクリエイターおよびスタジオへの機会創出を見込んでいる。
業界への影響
この動きは、Web3 IP分野における動向の一環である。この分野では、PIP Labsが、オンチェーンで知的財産を管理およびプログラムするために設計されたレイヤー1ブロックチェーン「Story Protocol」の開発で主要なプレイヤーとして台頭している。Story Protocolは、クリエイターが作品をトークン化し、IPをオンチェーンに記録し、その使用、共有、改編の条件を設定できるようにすることを目的としており、権利保有者がコンテンツとその二次利用を管理し続けることを支援する枠組みを意図している。PIP Labsは2024年8月、a16z CryptoとPolychain Capitalが主導するシリーズBラウンドで8,000万ドルを調達している。
投資家の視点
この提携は、従来のエンターテインメント産業の資金調達と流通モデルに対する代替案を提示する。オンチェーンでの直接的な資金調達とIP管理は、仲介者を減らし、クリエイターへの還元を増やし、流動性と二次市場の可能性を高める機会をもたらす可能性がある。一方で、規制環境の整備、技術的参入障壁、市場の成熟度といったリスク要因も存在する。長期的な成功は、採用の規模、規制の明確さ、そして伝統的なエンターテインメント業界との統合の度合いに依存するだろう。
まとめ
AIスタジオのMugafiとブロックチェーン・プラットフォームのAvalancheは、エンターテインメントIPの大規模なトークン化を通じて、コンテンツの資金調達と流通の新たなモデルを構築するための提携を発表した。この取り組みは、ブロックチェーン技術がリアルワールドアセットの分野で果たし得る役割を示すとともに、エンターテインメント産業におけるクリエイター経済の変革を目指すものである。