ビットコイン財務省株が「不良資産」化、10万7000ドルの平均取得価格が遅れて参入した企業を水没させる

ビットコインを大量に保有する上場企業(ビットコイン財務省企業)の株価が、保有資産価値(NAV)に対して大幅な割安で取引される「不良資産」状態に陥っている。アーテミスのデータによると、約683億ドルの時価総額を持つこのセクターは過去1か月で27%、3か月で41%下落し、ビットコイン自体の下落率(それぞれ約13%、16%)を大きく上回った。特に、メタプラネットやナカモト(NAKA)など遅れて参入した企業のビットコイン平均取得価格は10万7000ドルを超えており、現在の9万ドル台前半の価格では評価損を抱えている。この状況は、かつて機能した「高値で株式を発行し、安いビットコインを買い増す」という財務エンジニアリングの仕組みを停止させた。セクターが復調するためには、単なる価格反発以上の、価格安定、戦略的ガバナンス、レバレッジ需要の回復という構造的な修復が必要とされている。また、マイクロストラテジー(現:ストラテジー)がセクター全体のビットコイン保有量の80%以上、時価総額の約72%を占めるという極度の集中リスクも市場の課題となっている。

概要

ビットコインを企業財務として大量に保有する上場企業(ビットコイン財務省企業)の株価が、保有資産価値(NAV)に対して大幅な割安で取引される「不良資産」状態に陥っている。アーテミスのデータによると、このセクターは過去1か月で27%下落し、ビットコイン自体の下落率(約13%)を大きく上回った。特に、遅れて参入した企業のビットコイン平均取得価格は10万7000ドルを超えており、現在の価格水準では大きな評価損を抱えていることが、従来の財務モデルの機能停止を招いている。

背景

これまでの市場サイクルでは、ビットコインを保有する企業の株式は、その純資産価値(NAV)に対して大幅なプレミアム(割増し)で取引されていた。これにより、企業は高い価格で株式を発行し、相対的に安いビットコインを購入することで、1株当たりのビットコイン保有量を増加させる「財務エンジニアリング」が可能だった。この仕組みは、持続的な株式プレミアムに依存していた。

企業動向

ガラクシー・リサーチの分析によると、メタプラネットやナカモト(NAKA)などのビットコイン財務省企業は、平均取得価格が10万7000ドルを超える積極的なポジション構築を行った。現在のスポット価格が9万ドル台前半で低迷しているため、これらの企業は時価評価による大きな損失を管理している状況だ。一方、マイクロストラテジーは最近、約14億4000万ドルの現金準備を調達する動きを見せている。これは、クーポンや配当の支払いをカバーし、強制売却なしに長期的な弱気市場に耐え得る堅固なバランスシートを構築するための措置と見られている。

市場分析

ガラスノードのデータは、ビットコイン価格が11月中旬以降0.75分位を下回り、流通供給量の4分の1以上が未実現損失を抱えていることを示している。ビットコイン財務省企業セクターは、ビットコイン自体よりも高いベータ(変動率)で下落しており、ナカモトは1か月で38%以上、3か月で83%以上も急落した。かつて存在したNAVに対するプレミアムはほぼ消滅し、現在では多くの企業が債務調整後の市場価値(mNAV)の1.0倍近辺またはそれを下回って取引されている。クリプトクアントのデータによれば、平均週間スポット・先物取引量はさらに20万4000BTC減少し、約32万BTCと、サイクル的に低い流動性と一致する水準にある。

業界への影響

ビットコイン財務省企業セクターには極度の集中リスクが存在する。利用可能なデータによれば、マイクロストラテジーだけでセクターが保有するビットコインの80%以上を支配し、カテゴリー全体の時価総額の約72%を占めている。これは、この資産クラス全体の運命が、マイクロストラテジーの流動性ダイナミクスや指数採用状況に強く結びついていることを意味する。さらに、MSCIが主要指数から「デジタル資産財務省企業」を制限するかどうかに関する協議が懸念材料としてのしかかっている。

投資家の視点

現在のリスク回避環境では、株式を通じた追加的なレバレッジへの需要は限られている。ビットコイン財務省企業がNAVの0.9倍で取引される場合、機関投資家はブラックロックのIBITのようなスポットETFを保有する方が数学的に有利となる。なぜなら、ETFは1.0倍のエクスポージャーを、より低い手数料、狭いスプレッド、ゼロの執行リスクや企業コストで提供できるからだ。プレミアムが復活するためには、資金調達率や建玉などのデリバティブ指標が、標準的なETFでは満たせないリスク選好の回復を示す必要がある。また、企業は積極的な蓄積からバランスシート防衛へと重点を移し、将来の株式発行が明確な価値創造の閾値と結びついた規律あるものだと投資家に示すことが、信頼回復とmNAV倍率の再拡大には不可欠と見られている。

まとめ

ビットコイン財務省企業セクターは、遅れて参入した企業の高い平均取得価格とビットコイン価格の低迷により、従来の成長モデルが機能しない「不良資産」状態に直面している。セクターの再生には、ビットコイン価格が10万7000ドルの水準を持続的に上回ることに加え、市場のリスク選好の回復、企業ガバナンスの戦略的転換、そして指数採用を巡る不確実性の解明など、構造的な修復が多岐にわたって必要とされている。

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