概要
中国のAIチップメーカー、ムーアスレッズ・インテリジェント・テクノロジー(Moore Threads)は、2025年12月5日、上海証券取引所の新興企業向け市場「STAR市場」で新規上場を果たした。上場初日の株価は公募価格を大幅に上回り、5倍以上に急騰した。これにより、同社の時価総額は約430億ドルに達し、米Nvidiaへの挑戦者として注目される同社に対する市場の強い期待感が示された。
背景
ムーアスレッズは、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を中心とする高性能コンピューティング・チップの設計・開発を手がける中国企業である。世界的なAIブームと、米中対立に伴う先端半導体の調達制限を背景に、中国国内では半導体の国産化・自律化への要求が高まっている。同社は、AI訓練や高性能計算に不可欠なGPU市場で圧倒的シェアを持つ米Nvidiaへの代替供給源として期待を集めている。
企業動向
同社は、AIやメタバース、科学技術計算など幅広い用途向けにGPUおよび関連ソフトウェアプラットフォームを開発している。上海で開催されたAIカンファレンスに出展するなど、市場への認知向上に努めてきた。今回のIPOは、研究開発の強化や生産能力の拡大など、事業基盤を強化するための資金調達が目的の一つとみられる。
市場分析
2025年12月5日の取引初日、ムーアスレッズの株価は公募価格に対して5倍以上(500%超)上昇した。この急騰により、時価総額は約430億ドルに達し、中国における今年最も注目度の高いIPOの一つとして、活発な取引を記録した。この株価動向は、中国のハイテク株、特に国産半導体関連銘柄に対する投資家の強い買い意欲を反映している。
業界への影響
ムーアスレッズの上場と株価の急騰は、中国の半導体産業、特にAIチップ分野に対する投資家の自信の表れとみられる。同社の成功は、中国国内の他の半導体設計企業にも追従を促す可能性があり、国産GPUエコシステムの形成を加速させる契機となりうる。一方で、技術的な競争力や量産能力においてNvidiaなど国際的な競合他社に追いつくまでの道のりは依然として課題として残っている。
投資家の視点
今回の株価急騰は、中国の技術的自立を目指す国家的な動き(「内循環」)を背景とした、長期的な成長ストーリーへの期待が先行した面がある。投資家は、中国国内の巨大なAI市場と政府の支援政策を追い風に、同社が高い成長を実現する可能性を見込んでいる。しかし、激化する技術競争、供給網の制約、および地政学リスクは、主な不確実性要因として認識されている。
まとめ
ムーアスレッズの新規上場初日の株価は5倍以上に急騰し、約430億ドルの時価総額を記録した。これは、米Nvidiaへの中国勢の挑戦者としての同社への強い市場期待を如実に示す結果となった。中国の半導体国産化の流れの中、同社の今後の技術開発と商業化の進展が、業界と市場の注目を集め続けることになる。