JPモルガン、ビットコイン(BTC)の金連動目標を17万ドルに据え置き - 直近の急落後も見解維持

ウォール街の大手金融機関JPモルガンは、直近のビットコイン価格の急落にもかかわらず、金(ゴールド)と連動させたビットコインの理論的価格目標を17万ドルに据え置いている。同社の分析チームは、ボラティリティ調整済みのビットコイン対ゴールドモデルに基づき、今後6〜12ヶ月でこの水準に達する可能性を示唆した。現在のビットコイン価格は約9万1千ドル台で推移している。この見解は、ビットコイン最大の企業保有者であるマイクロストラテジー(MSTR)への分析の中で示された。同社の企業価値対ビットコイン保有額比率(mNAV)は現在1.13と、強制売却リスクの目安とされる1.0を上回っており、JPモルガンはこれを「励みになる」と評価。さらに、同社が14億ドルの準備金を保有し、約2年分の配当・利払いを賄える緩衝材となっている点にも言及した。一方、JPモルガンはビットコインの生産コスト見通しを9万4千ドルから9万ドルに下方修正。中国での採掘圧力の再燃や、高コスト採掘者の撤退が価格下落の一因と分析している。

概要

JPモルガンは、ビットコイン(BTC)が直近で急落した後も、ボラティリティ調整済みのビットコイン対ゴールドモデルに基づく理論的価格目標を17万ドルに据え置いた。この目標は今後6〜12ヶ月を想定している。同レポートでは、ビットコイン最大の企業保有者であるマイクロストラテジー(MSTR)の財務健全性に焦点を当て、同社の強制売却リスクは限定的との見方を示した。

背景

ビットコインは、2025年10月に12万ドル超の史上最高値を記録した後、下落し、一時8万2千ドルまで値を下げていた。JPモルガンのレポートは、このような市場の変動の中でも、長期的な評価モデルを維持する姿勢を示している。

企業動向

レポートは、ビットコインを大量に保有する企業マイクロストラテジー(MSTR)に言及している。同社はマイケル・セイラー氏が創業し、バランスシート上に65万BTCを保有する世界最大の企業保有者である。JPモルガンは、同社の企業価値対ビットコイン保有額比率(mNAV)が現在約1.13である点を指摘。この比率が1.0を下回ると強制売却リスクが高まるとされるが、現状はそれを上回っており「励みになる」と評価した。さらに、同社が14億ドルの準備金を保有し、これが約2年分の配当および利払いを賄う緩衝材(バッファ)として機能していると分析した。

市場分析

レポート発表時点で、ビットコイン価格は約9万1,200ドルで取引されていた。JPモルガンは、ビットコインの最近の下落要因として、中国での採掘(マイニング)への圧力再燃と、他の地域における高コスト採掘者の後退を挙げた。エネルギーコストが高止まりする中、一部の採掘者がビットコインを売却したと報じられている。また、ハッシュレート(採掘に費やされる総計算能力)と採掘難易度の最近の低下を受けて、ビットコインの生産コスト見積もりを9万4千ドルから9万ドルに下方修正した。同社は、生産コストを下回る価格が長期間続くと、限界採掘者が撤退し、難易度が下がってコスト見積もりがさらに低下するという自己強化サイクルが発生する可能性があると指摘(2018年の例を参照)。一方、10月10日以降のパーペチュアル先物のレバレッジ減少は、ほぼ解消されたと付け加えた。

業界への影響

JPモルガンは、MSCI指数による1月15日の決定を「非対称なカタリスト」と位置づけた。MSTRの除外は、10月10日以降の株価急落でほぼ織り込み済みである一方、肯定的な結果(組み入れ継続等)であれば、強い反発を促す可能性があると分析した。

投資家の視点

JPモルガンのレポートは、ビットコイン価格の短期的な変動よりも、金との比較に基づく長期的な理論価値に注目するよう示唆している。マイクロストラテジーについては、mNAV比率が1.0を上回っていることと、多額の準備金があることから、近い将来にビットコインを売却せざるを得ないリスクは低いとの見方を提供した。ただし、生産コストの下方修正は、採掘業界の収益性圧迫が価格に与える影響についての注意喚起とも解釈できる。

まとめ

JPモルガンは、ビットコインの短期的な価格下落を認めつつも、金を基準とした長期的な評価モデルに基づき、17万ドルという理論的価格目標を維持した。同時に、主要保有企業であるマイクロストラテジーの財務的レジリエンスを評価し、強制売却による市場への過度な圧力は当面ないとの見解を示した。市場は、採掘コストの動向や指数組み入れに関する決定などのカタリストに注目している。

一覧に戻る