概要
ビットコインを大量保有する上場企業マイクロストラテジー(MSTR)は、ナスダック100指数への残留を果たした。しかし、ブロックチェーン調査会社タイガーリサーチの分析によれば、同社のビジネスモデルの持続可能性に対する懸念が高まっており、2028年が会社の存続を決定づける重要な試練の年となる可能性が指摘されている。同社は市場に影響を与え得る規模のビットコインを保有する「超大型ホルダー」である。
背景
マイクロストラテジーは2020年に企業によるビットコイン財務戦略(コーポレート・トレジャリー)モデルを先駆け、世界中に数十の追随者を生み出した。しかし、ビットコインの価格変動が株価を直撃する中(過去3か月で47%下落)、このレバレッジをかけた戦略が迫り来る債務を履行できるかどうかについて疑問の声が強まっている。
テクニカル詳細
タイガーリサーチの報告書は、マイクロストラテジーの資金調達アプローチにおける重大な転換点を指摘している。2023年までは現金準備と小規模な転換社債に依存し、保有ビットコインは10万BTC台前半の範囲に留まっていた。しかし2024年以降、同社は優先株式、ATM(市場取引)プログラム、大型の転換社債発行を組み合わせることでレバレッジを劇的に増加させた。これは、ビットコイン価格の上昇がさらなる購入を可能にするというフィードバックループを生み出した。
マーケット動向
問題は、これらの転換社債に付随する買収請求権(コールオプション)が2028年に集中しており、約64億ドル(ビットコイン価格9万ドルと想定した場合)の償還圧力を生み出している点にある。投資家は早期償還を要求でき、会社はこれを拒否できない。もし2028年に借り換えの選択肢が閉ざされれば、同社は約7万1千BTCを売却せざるを得なくなる。これは1日取引量の20-30%に相当し、市場全体の下落スパイラルを引き起こす可能性がある。
影響と展望
同社の根本的な脆弱性は、調達した資本のほとんど全てを、現金を生み出す生産的資産ではなくビットコインの購入に充てた点にある。報告書は「資金が生産的資産に配分されていれば、会社は自然な返済源を持てた」と指摘し、「代わりにビットコインの蓄積に焦点を当てた結果、償還のための現金がほとんど残っていない」と述べている。マイクロストラテジーの静的な破産閾値は2025年現在2万3千ドル(73%の価格下落を必要とする)だが、債務の成長がビットコインの蓄積を上回ったため、この水準は2023年の1万2千ドルから2024年の1万8千ドルへと着実に上昇している。報告書は「マイクロストラテジーの構造的リスクは通常時は低く見えるが、2028年に極めて集中する」と警告している。また、より新しいデジタル資産トレジャリー企業は、2022年の低迷期を生き延びて構築されたマイクロストラテジーの多層的な安全メカニズムを欠いており、さらなるリスクに直面していると付記した。
まとめ
マイクロストラテジーはナスダック100指数への残留には成功したものの、その核心的なビジネスモデルである「ビットコイン買い持ち戦略」は2028年に集中する巨額の債務償還という重大な試練に直面している。調達資金を現金フローを生まないビットコインに集中投資した結果、内部からの返済能力に乏しく、万が一借り換えに失敗した場合、市場全体に影響を与えかねない規模のビットコイン売却圧力が現実のものとなるリスクが指摘されている。